国土地図株式会社

古道 太平山「木曽石登山口」を行く

 秋田市にある太平山は標高1170mで、前岳(神仙山)、中岳(木曽吉山)、奥岳を総称して「太平山」と呼ばれています。古くから信仰の対象になっている山で、山頂には太平山三吉神社の奥宮が鎮座し、奥岳に向かう登山道沿いには観音様や祠、神社、女人堂があり往時を偲ぶことができます。今回は最も古い表参道の野田登山口からではなく、江戸時代末期に作られた古道「木曽石登山口」から入山し山頂小屋で一泊してきました(2014年7月5、6日撮影)。

(太平山全景)
 秋田市河辺赤平、赤平橋付近から眺める前岳(神仙山)から奥岳までの稜線です。どの山も標高1200mに満たないですが、傾斜が急峻で谷も深く登りがいのある山々です。

01


(金山滝)
 木曽石登山口に着きました。早速入山です。斜面を登ると金山滝(かねやまたき)という落差5m弱の滝があります。ここでは昔、禊(みそぎ)をした場所です。私も手を清め厳しい登りに備え、熊避けの鈴を鳴らし斜面にとりつきます。

02

 

(混合林)
 厳しい斜面を登ると尾根に出ました。この写真は振返って撮ったのですが、左手は赤松の大木に対し右手は細い杉林が広がっています。赤松は厳しい環境、尾根筋を好み、杉は湿っている谷間や谷筋を好みます。これは谷間や谷筋は栄養分が豊富で杉の植林に適しているからです。後で調べたところ、右手の杉林は官行造林地であることを知りました。

03

 

(観音様)
 混生林の緩やかな道を歩くと道端に観音様が出てきます。よく見てみると「三番観音」と彫られています。この登山道ができた頃は奥岳までの間に三十三番まであったと思いますが、既に欠番が出ています。明治の廃仏毀釈か自然の猛威を受けたのでしょうか?

04

 

(保安林)
 金山滝から約1時間半、主稜線に合流しました。東北の山々は標高500mより上はブナ林などの落葉広葉樹林が広がり、杉や赤松などの木々は生えていません。ここからは国有林に入り秋田森林管理署管内の「水源かん養保安林」になります。人の手が入っていないので植生が豊かです。

05

 

(女人堂)
 太平山も昔、女性禁制の山だったので前岳山頂手前には女人堂があります。標高約710mの地点ですが、昔の参拝者が植えたのか杉の老木が数本あります。

06

 

(三角井戸)
 女人堂を後にして中岳へ向かいます。中岳の中腹には三角井戸という水場があり、縦走コース中、唯一の水場です。この三角井戸には歴史があり遥か昔、「三吉様」という神様が剣でこの井戸を掘ったという伝説がある場所です。

07

 

(中岳)
 標高952mの中岳(木曽吉山)に着きました。山頂には二等三角点の他、木曾吉山神社、観音様、建設省時代に作られたマイクロウェーブ反射板があります。標高も1000mに近いので樹木も低く眺望も女人堂に比べよくなります。

08

 

(奥岳を望む)
 中岳(木曽吉山)山頂の裏側からはこれから向かう奥岳(尖っている山)が眺望できます。直線距離にして5kmほどですが、ここから先の登山道は稜線歩きではなく稜線の北側斜面を延々と歩く道幅も狭いトラバースの道になります。また道標は野田コース分岐点まで一切ありません。所々に藪の箇所もありますので初心者の方は中岳でUターンをしたほうがいいです。

09

 

(登山道)
 この写真は野田コース分岐点手前、剣岳北斜面の登山道です。去年の夏頃は藪を漕がずに歩けましたが、一年経つと元の自然に戻ります。自然の治癒力に人間は敵わないですね。

10

 

(難所 弟子還岳)
 野田コース分岐点に合流し道も幾分よくなり、奥岳へ向かいます。ここからはより高山帯の雰囲気が増し、眺望もきくようになります。宝蔵岳というピークを越えると目の前に難所、弟子還岳が目の前に迫ります。

11

 

(仁別国民の森を望む)
 弟子還岳手前の鞍部から見える「仁別国民の森」方面です。仁別国民の森周辺には日本三大美林の一つ、「天然秋田杉」の森が広がり散策コースなどがあります。

12

 

(鎖場)
 「仁別国民の森」を眺望した後、いよいよ弟子還岳を登ります。弟子還岳は奥岳の手前にある山で、鎖場が三箇所あります。また6月後半から7月上旬にかけては高山植物の花々が咲き乱れる場所でもあり、高山要素がある山です。

13

 

(奥岳)
 鎖場を抜け弟子還岳山頂に着きました。奥岳が目の前です。写真では快適な稜線歩きの様に見えますが、狭い稜線ですので足下が非常に狭く滑落には要注意です。

14

 

(ヒロハシラネガンピ)
 奥岳に向け歩いていると白い花を見つけました。この花は「ヒロハシラネガンピ」と呼び、ナデシコ科に分類される花です。亜高山帯や深山に生える花で秋田県のレッドリストでは、準絶滅危惧(NT)に分類されています。

15

 

(奥岳山頂)
 山頂には太平山三吉神社奥宮をはじめ、参詣所(宿泊所)、一等三角点(基準点名 太平山)もあり眺望は抜群です。天気がよければ南に鳥海山、月山、北に岩木山、白神山地、西に岩手山や早池峰山などの名峰を眺望することができます。

16

 

(縦走した峰々)
 縦走した峰々です。こうして見ると弟子還岳の南斜面は雪崩で磨かれたのでしょうか?とても急峻だということがわかります。

17

 

(夕日)
 男鹿半島に沈む夕日。今日一日の疲れを忘れさせる瞬間です。

18

 

(夜景)
 この日は雲もなく満点の夜空でした。月は上弦の月です。もう少しで満月ですね。遠くに秋田市の夜景がみえます。

19

 

(朝日)
 朝4時頃に撮った朝日です。空気が澄んでいればこの方角に秋田駒ケ岳、岩手山、八幡平などの山々が見渡すことができます。朝日に照らされている山が白子森(標高1179m)という太平山地の中で最高峰の山です。

20


(奥岳を振返る)
 参詣所で一泊した後、多くの登山者が使う旭又コースで下山しました。縦走コースとは違い整備も行き届いているので登山者も多く安心です。

21

 

(御手洗の池)
 このコースには途中、標高800mの地に御手洗(みたらし)の池という水場があり乾いた喉を潤してくれます。これより先は標高がぐっと下がり天然秋田杉が混じる混生林になり、弟子還沢の沢音が聞こえてきます。

22

 

(御滝神社)
 御滝神社が見えてきました。ここは標高が500mより低いので天然秋田杉などの針葉樹が目につきます。弟子還沢が非常に近いので林の中にも沢の音が聞こえてきます。

23

 

(弟子還沢)
 沢には橋が架けられているので安心して通行できます。

24

 

(森林鉄道跡)
 ここから先、登山口のある旭又までは枕木が残る森林鉄道跡(インクライン)を歩きます。鉄道跡ですので急な傾斜はなく非常に歩きやすい道が旭又まで続き、「駐車場」という看板が見え多くの車が停めてある駐車場が見えてくると日常に戻り、今回の古道を訪ねる登山は終了です。

25

(I. S.)